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などと都合よく物事を解釈し、襖の方を見ると月明かりが薄く差し込み、中を映し出す。加代も銀造を意識しているようで寝付けないのか、何度も寝返りを打つ姿が目に入った。
―ええい、ままよ―
覚悟を決めた銀造は襖の奥に声を掛けた。
「加代さん起きていらっしゃいますか」
少し間をおいて声があった。
「はい」
「そちらに行っても良いですか」
「……どうぞ」
銀造は襖を開け中に入った。淡い月明かりの下で、加代は布団の上に正座をして真っ直ぐこちらを見詰めていた。
その姿を見た銀造は、思わず加代の体を抱きしめる。加代は抵抗する素振りもなく銀造を受け入れた。
全てが終わり、我に返った銀造はどうするべきか考えていた。
加代を説得して東京か横浜に連れていきたいが、昨夜の話の限りでは難しそうだ。かと言って自分がこの家に入るのはもっと考えられない。商売が出来なければ生活していけないからだ。
起きた加代に自分の考えを話す。案の定、加代はこの家から出ることには全く賛同しなかった。そこで生活の為にも収入を得ることの必要性を説いた。
聞き終えた加代は、
「それならば心配はいりませぬ」
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