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「ええ、その人形です。妹が蔵の整理をしていて、偶然見つけたんです」
「で、夜な夜な妹さんに悪夢を見せ、その上勝手に動く、と」
将大が継実を振り返って言う。
「動くっていうのは、妹がそう言ってるだけで。俺には分からへんのやけど」
良識のある大人らしく弁明する。
「なるほど」
将大は人形の前にしゃがみ込むと、じっくり観察を始めた。久しぶりに見る、真剣な眼差しだった。
しかし穴の開くほど見つめたところで、霊感が一ミリもない将大に、何か分かるはずもない。
鈴は人形には見向きもせず、今度は丸い水晶玉を手に取って、日光にかざして遊んでいる。
「どう、思いますか?」
さっきまでとは違う質感の声で、継実が私に聞いた。
御典、御鈴という霊能者のことを、将大がどんなふうに伝えたか知らない。継実は目の前の、霊能者というにはあまりに若い、ただの女子高生である私に対して、取る態度を決めあぐねているようだった。
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