1、封印を解かれた人形

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 いつも仕事着にしているパンツスーツではなく、ワンピースに、もこもこしたカーディガンという服装を選んでしまったことを、少しだけ後悔した。  将大に変わって人形の前に座る。そっと黒髪に触れてみた。 「人毛が使われているようですね。この子は、誰かの身代わりとして作られたのだと思います」  屋敷には、何体か霊の気配が潜んでいる。私に分かるのは、そこまでだ。 「亡くなった子供を偲んで、人形を作らせたということですか?」 「子供とは限りません」  幼い頬に、とろけ出しそうな色香が込められている。 「そうですか……」  継実が肩を落とした。 「足の裏」  鈴がいたずらっぽい目で、人形の足元を指さす。  着物の裾をめくり、人形の身体を傾けた。白い足袋の裏が茶色く汚れている。 「泥汚れか……?」  足袋の裏をそっと指先でなぞって、将大が眉をひそめた。 「先輩、この汚れはいつから?」 「さあ。気が付かなかった。最初から汚れていたんじゃないのか?」  あまり関心がなさそうに答える。
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