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「この子が納められていた、箱を見せてもらえますか?」
「分かりました」
暫くして、継実は長さ1メートルほどもある木箱を抱えて戻って来た。
「箱書きがありませんね」
蓋を取り、表裏を返しても、どこにも作者の名や作品名が記されていない。全くの無地だ。蓋の四隅には、釘を抜いた丸い穴があった。
「やっぱり」
箱を見て呟くと、鈴はまたお雛様の方へひらひらと吸い寄せられてゆく。
霊能者として優れているのは鈴の方だ。だが自由気ままな妹は、他人と話すことを好まない。
「この箱は、この子の棺です」
だから、説明役はいつも私だ。
「妹さんは、この子の封印を解いてしまったんです」
「では元通り箱にしまって、お祓いするなり供養してもらうなりすればいいんでしょうか?」
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