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「いいえ。妹さんには、封印を解いた責任があります。人形が障りを起こすのは、何か訴えたいことがあるからです。何を言いたがっているのか。なぜ封印されたのか。ちゃんと知る必要があります」
継実は曖昧に微笑んだ。
見えないものを売りつけられそうになって、困っている。そんな顔だった。
「確かに、祓うしかない悪霊も存在しますし、お寺で供養してもらうことで救われる魂もあるでしょう。ですがこの人形はこの家に縁があるものです。何に心を残しているのか、この家の人間が聞いてあげるのが一番だと思います」
一瞬間を置いてから、継実はきっぱりとした口調で言った。
「正直言って、僕はあまりそういうの、信じていないんです。説明のつかない超常現象があるとしたら、まだ分析に足るだけのデータがないだけです。ただ妹がどうしても霊能者の方を、と言うので」
分かったと頷く。
信じるも信じないも、個人の自由だ。それで仕事がやりにくくなることもあるが、想定の範囲内だった。
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