1、封印を解かれた人形

8/8
前へ
/89ページ
次へ
「妹さんに、会えますか?」 「今、近くのカフェでアルバイトをしてます。もうすぐ戻ってくると思います」  将大が弾みをつけて立ち上がった。 「そしたら、俺らもさくっとランチ行かして貰いますわ。先輩、お昼は?」  この年上の幼馴染は、どんな時でもマイペースだ。 「もう済ませたから」  部屋を出てゆく私たちを追いかけ、継実が口を開いた。 「妹は今、深い混乱の中にいます。僕は何としても転勤の前に、妹を安心させてやりたい。……このまま母と二人、この古い家に残していくのが忍びなくて」  継実の切羽詰まった眼差しを受け止め、頷いた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加