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2、淡海
「ごめんやで、典ちゃん。鈴ちゃんも」
屋敷の門を出るなり、将大が頭を下げる。
「気ぃ悪くせんといてな。先輩、ちょっとナーバスになってはるねん。ほんまはめっちゃいい人やねんで。俺も色々お世話になってるし」
「謝らなくていいよ、将大にい。私たち、気にしてないから。むしろ、継実さんの反応が普通だと思うよ。霊能者っていうだけで怪しいのに、私たちなんてどう見たってただの小娘だし」
こんなふわふわした格好で来た方も悪い。紺地に小花の散ったワンピースを見下ろす。
「ほんとは怖いんだよ、私たちのこと」
鈴がくすりと意地悪な笑いをもらす。こら、と睨みつけるとそっぽを向いた。きっと、ベーッと舌を出しているに違いない。
白壁の美しい塀に沿って歩き出す。
「しかし、贅沢なこっちゃなぁ。琵琶湖のすぐそばに、こんなでかい屋敷。全室、琵琶湖ビューとちゃうか?」
数奇屋造りのまさに大邸宅だが、軒が低いせいか不思議と威圧感は感じさせない。むしろ控えめで、瀟洒な雰囲気が漂っていた。敷地はちょうど、琵琶湖に突き出すような形をしている。
「毎日この景色見て育ったら、先輩みたいな器のおっきい人間になれんにゃろなぁ」
将大がいつもの、のんびりとした口調に戻って言う。
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