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感染爆発✨✨
地球は、かつてないほど東西の緊張が昂まっていた。局地的に戦火を切った紛争はやがて地球全土へと広がっていく。
否が応にも最終戦争へと発展していきそうだ。
もはやどちらが先に最終兵器のボタンを押すか、待ったなしの状態と言えるだろう。
万が一、どちらかがボタンを押した瞬間、当然、相手国からも報復措置が取られるに違いない。
そうなれば、おのずと結果は見えている。
東西どちらの陣営にもミサイルの雨が降り注ぐだろう。地球滅亡へのカウントダウンが始まった。
たったひとりの東の独裁者と西側の権力者らが地球の命運を握っていた。
なんの権力も持たないボクらはひたすら平和を祈る事しか出来ない。
そんな最中202X年、無数の隕石が宇宙から飛来した。
当初、若者らは夜空を見上げ、世紀の天体ショーだとはしゃいでいた。
のん気なものだ。
破滅への序曲とも知らずに。
夜が明け、世界各地で不気味な雨が降った。ヌルヌルと粘りつくような白い雨だ。
その白い雨に降られた人間は次々と高熱を発し昏睡状態になって倒れていった。やがて彼らは硬化してサナギとなった。
研究によると落ちてきた隕石に付着していた地球外のウイルスに感染したらしい。
しかも人から人へ空気感染し、あっという間にウイルスは世界各地へ広がっていった。
いわゆる感染爆発だ。未知のウイルスに為す術もなく感染爆発により世界は危機を迎えた。
気づいた時には、もはや手のつけられない状態になってしまった。
その宇宙から飛来したウイルスにより感染した人類の多くは硬化しサナギと化した。
そしてサナギから羽化ると、人々は美少女になっていく。
認知症の老人も老いも若きもブサイクも赤ん坊さえもすべての男女が美少女へ変貌していった。末期ガンだった老人も十五歳の健康な女子に生まれ変わった。
ただひとりボクを除いて。
ボクは隕石が飛来する直前、交通事故に遭って病院へ搬送されていた。
まったくの偶然だが、そこで人工呼吸器を取り付けられ感染を免れみたいだ。
しかし、それだけではない事が後に判明した。どうやらボクには何か特別なファクターが備わっているらしい。
そのためボクだけが美少女化を免れたみたいだ。世界でも稀なケースと言えるだろう。
しかしボクが男性の身体だとバレたら、美少女たちに拉致され死ぬまで奉仕させられるかもしれない。
最悪、どこかの研究所で監禁され一生、研究材料にされるだろう。
救急病院も新たな感染症のためパンデミック状態だ。まだ研究途中だが、わかっていることは、この未知のウイルスに感染すると初期症状としてバタバタと高熱で倒れる。
多くの人は白く粘りつくような雨にうたれ感染したようだ。
そしてひと晩かけてサナギと化し、表面が硬化する。数日後、羽化すると華麗な蝶のごとく美少女化してしまうらしい。
人から人へも空気感染するので何人も拒むことが出来ない。
東の独裁者も西の大統領ら権力者も美少女に変わってしまったようだ。
致死率は高くないが、この一ヶ月はどこの国もアップアップで極限状態と言って良いだろう。労働者がすべて美少女に変わってしまったのだから無理もない。各国とも対応にてんてこ舞いだ。
病院でもボクの主治医らが感染しサナギになり美少女化している。しかも美少女化した人類は雌雄同体になってしまった。
そういったワケで、とてもではないが悠長に自己紹介などしていられない。取り急ぎ名前だけでもお報せしておこう。
ボクは玉井翔。
幼馴染みで親友の蒲生アキラは玉井ショーと呼んでいる。完全にディスッている。恥ずかしくて仕方ない。
お互い今年の春、成人し大学に進学した。
その親友のアキラともパンデミック以来、連絡が取れていない。致死率は高くないので生きているとは思うが、電話もラインの応答も一切ないので心配だ。
用心深くボクは自宅へ戻り、静かに事の成り行きを見守っていた。事故の後遺症で自由に動けないのだ。焦っても仕方がない。
ボクだけ未知のウイルスに感染せず、女体化もしていないのだ。何か恐ろしい予感がしてくる。
ようやく数週間後、蒲生アキラからスマホに連絡が来た。
『よォ、オレオレ、玉井ショー生きてるか?』
相変わらず軽い挨拶だ。いつも通りだが、聞いたことのない声だ。女の子のように可愛らしいアニメ声をしている。
「誰が玉井ショーだよ。だいたい、お前……、変な声だな。女の子みたいだぞ。マジでアキラなのか?」
ボクの知っている声ではない。まるで違う女の子の声だ。
スマホの着信画面には『蒲生アキラ』と表示されている。間違いないだろう。
『ああァ、マジマジ。声も顔もまったく変わっちまって、全然、オレじゃないみたいだろ』
「ン、でも元気そうで良かったよ。連絡が取れないから心配したんだぞ」
『まァ、見た目はエラく変わっちまったけどな。スゴく元気なんだ。それよりもお前は大丈夫なのか? 事故でICUに担ぎ込まれたって聞いたけど。声はまったく変わりないなァ』
「ああァ、なぜかな。もしかしたら人工呼吸器を装着していた所為かな」
『ンうゥ、まァ、それだけじゃないだろう。ICUに入っていた人でも、その後に感染して美少女になったらしいからな』
「ううゥン……、じゃァなんでボクだけ美少女になっていないんだろう」
不思議だ。ボクにだけ何か特別な因子があるのだろうか。
『夜になったら、玉井ショーの家に遊びに行くからさぁ。あまりにも可愛らしくてびっくりして惚れるなよ』
いつものようにフレンドリーなやり取りだ。
「フフゥン、誰がアキラなんかに惚れるか」
そんなに可愛くなっているのだろうか。その時はあまり期待はしていなかった。
アキラの言うことを真に受けていたらロクなことがない。
彼女を紹介すると言って歓んでいたら、女子プロレスラー顔負けのマッチョなおネエを連れてきた事もある。あの夜は、おネエの真夜中の寝技にタジタジだった。
夜になりボクの家のインターフォンが鳴らされた。おそらくアキラだろう。
ドアを開けると、見たこともない美少女が飛びついてきた。生まれて初めてのハグだ。
「よォ、玉井ショー。オレオレ」
まるで小学生のように無邪気な挨拶だ。
「お、お前……? マジでアキラなのか」
ボクは遠慮がちに美少女に訊いた。まったく見覚えがない美少女だ。完全な女の子と言って良い。
美少女特有のピーチのように甘い匂いが漂ってくる。柔らかな胸が密着し、ドキドキしてきた。かなりたわわなオッパイだ。
「オレだってびっくりだよ。顔も形も、信じられねえェだろ……。背まで十センチ以上縮んだんだぜ」
アキラは大げさにアピールした。
しかも衣装も女の子のようなミニスカートだ。むき出しの太ももが妙に艶かしい。
「ああァ……」そういえばアキラは、ボクよりも頭ひとつ背が高かった。
しかし今は、ボクと背丈は同じだ。見るからに可憐で華奢な美少女だ。
同級生のはずだが、ヤケに幼く見える。元から茶髪だった髪の毛も今は明るい金髪のロングヘアだ。派手好きなアキラらしいが、まったく見た目が違った。
別人と言って良いだろう。
「ほらァ、玉井ショー、オッパイ触ってみろよ。本物だぜ」
豊かで柔らかそうなオッパイだ。かなりの巨乳だ。
「おいおい、勘弁してくれよ。アキラのオッパイなんか触れるか」
それにしても魅惑的なオッパイだ。アキラじゃなければ、揉んだみたいものだ。
「まァ、ここじゃァなんだから。入れよ」
取り敢えず、美少女をリビングへ招き入れた。
安物のセクシー動画じゃあるまいし、玄関先でオッパイを弄って、濃厚なラブシーンを演じるほどキモは座っていない。
しかしアキラは、リビングへ入るなり馴れなれしくボクに抱きついた。
「フフ、玉井ショー。お前、チェリーボーイだろォ」
いきなりアキラは妖しく笑みを浮かべ、唇がくっつきそうなほど顔を寄せてきた。
「えェ……? な、何を言い出すんだよ」
ドキッとして思わずボクは仰け反った。
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