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町に足を踏み入れた途端、嫌な声が聞こえてファルは顔を歪ませた。
急いで町まで駆けてきたつもりだったが、道を間違えたせいで時刻は昼を回ってしまった……この時刻は、学校が終わる時間なのである。
「ちびの癖に」
「家から勘当されたんだって?」
誰も直接殴りかかってはこない。ただ声だけだ。
顔を上げれば、少し離れた場所に、仕立てのいい服を来た少年たちがファルを見つめていた。
数ヶ月会わないだけで、声は低く、体格も変わっている……男の子は、あっという間に成長するのだ。それを目の当たりにしてファルは唇を噛み締めた。
(……気にしない、気にしない。僕だって、薬さえ手に入ればあいつらより、ずっと大きくなる)
森を抜け、坂を下る。大きな教会の角を曲がって門を抜ければ……そこが町だ。キルルーズという小さな町である。
魔法使いが住む場所には町ができ、国ができる……というのはこの国の古いことわざだが、その言葉の通り、魔法使いが現れると人が増え、その場所は町になる。
キアンは数年前に眠らじの森に住み着くようになったらしい。
それまでこのキルルーズは、森と谷に囲まれた牧歌的かつ不便な村だった。それがキアンのせいで、兵舎ができ、商店が生まれ、花売り館や学校までできた。
少年たちは昔はもっと中央に近い地域で暮らしていた、いわゆる貴族のご子息様だ。
町ができたおかげでこんな辺鄙な場所に飛ばされた。その憎らしさもあるのだろう。
「本当はこんな町に暮らさなくていいもんな、お前の家は湖のど真ん中。国王様のお膝元だ。なのにお前だけここにいる。なぜかわかるか?」
にやにやと、低い声で少年たちはファルにささやく。
ファルがいくら内緒にしていたところで、噂はあっという間に広がった。
森に住む、貧相な少年は貴族の息子らしい。魔法使いの弟子になったらしい……。
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