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「そうか。いや、失礼なことを聞いた。確かに、夕食までまだ時間がある。私が答えられる範囲でなら答えよう」
「では、ちょうどあちらにテーブルと椅子が二脚あります。そこでお話でもいかがですか」
そうだな、という一言とともにエルシアはフリージアに先に行けと顎でしゃくって指示し、フリージアは軽く会釈で応対してその場を去る。
エルシアが席に着くまでの間、カーテンを開け、戸棚からなにやら物がたくさんしまってある戸棚を開ける。
だが映り込んできたその物たちによって、その手はすぐに止まってしまった。
珈琲の粉が入った瓶やコーヒーメーカーが使ってくださいと言わんばかりに置いてあるのもさながら、驚くべきは紅茶の茶葉の種類で、目に入った茶葉だけでもアッサム、ダージリン、アールグレイ、セイロン、ディンブラ、ウバ―――と、一口含んだことのあるものから初めて見る銘柄まで、異常に豊富だった。
沸騰した熱湯を数分で沸かせられる簡易ポットや、数百束のシュガーと角砂糖の袋まで親切に置いてある始末だ。
流石に酒類は置いていなかったが、家具は最低限のものしか置いていないのに、明らかに必要ない嗜好品が置いてあるのはなぜだろうか。あまり親しくない北支部の者たちが来訪するから、奮発したのだろうか。それにしても、準備が良すぎるような気がするのだが。
「むむ……セレスめ。あれほど贅沢品は買い揃えるなと忠告したのだが……」
戸棚で何の茶葉を使うべきか迷っている背で、エルシアは椅子に座って腕を組み、眉尻を上げながら嘆息する。
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