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武市は流川家の影響によって実力・成果主義の世界のため、まず国家共通のルール―――法律というものが存在しない。民草はその領土を支配する暴閥の当主に支配されているため、ルールもまたその当主の存在そのものがルールということになる。
下手をすればルールを決めていない暴閥も多く、ほとんどの地域が無法地帯に近いというのが現状だ。
それでも武市が発展できているのは、流川を含めた一部の強者による影響力が絶大なためで、強者の逆鱗に触れるような真似をしていれば、その領民は領土もろとも跡形もなく消滅させられてしまう。ルールで民を縛る必要など、そもそもないのだ。
武市における強者は、自然災害すら操れるレベルの者も存在する。そんな存在に数多の犠牲を払い、徒党を組んで抗うよりも、強者の発展に協力する方が長生きできる。弱き者たちの多くは、そう考えて日々を生きているのだ。
とはいえ全員が全員というわけでは決してない。当然のことながらルールというものが存在しない分、無法者はどこにでもいるものだ。そんな存在を懲罰することができないこの武市では、治安が悪いのは当然の帰結と言える。
「とはいえ、西支部周辺よりはマシだという自負はある。彼らには失礼かもしれないが……」
頬に汗を一筋垂らしながら、申し訳なさげに視線を外す。簡易ポッドの湯が沸いたので、茶こしで茶葉をこしながら、ティーカップにダージリンティーを注いだ。
任務請負機関西支部とは東西南北ある支部のうちの一つ、``竜殺のジークフリート``が代表を務めている支部のことだ。
西支部は東支部から遥か西方の地、中威区西部都市の中心にある。
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