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確かかの都市は中威区と上威区の国境付近に位置し、毎日上威区の覇権を奪取せんとする中威区ギャングと、それを阻止する上威区ギャングの間で激しい紛争が起こっている激戦区で、日夜情勢が目まぐるしく変化する中威区最悪の闇都市と聞いている。
まだ行ったことのない地域だが、北支部のロビーにあるテレビから放送されるニュースでは、毎日その過激な情勢が話題になっている。己の主人はニュース番組に無関心のため、まだ知らない事柄であるが。
「承服しかねる事実ではあるが……中威区東部一帯の治安が悪くないのは、この一帯が中小暴閥自治区なのもあるだろうな……周辺のならず者どもにとって、暴閥は畏怖の象徴ゆえに」
その言葉の内容とは裏腹に、恨めし気な表情を浮かべるエルシア。
確かに暴閥は無名の民たちにとって、恐怖の存在だ。たとえ中位以下の暴閥といえど、その本質は戦闘民族。三十年前に終幕した``武力統一大戦時代``の中、脈々とその血を受け継いできた者たちである。
銃火器や簡素な魔術を振りかざし暴れる程度のごろつきなど問題にならない。彼らが邪魔だと判断すれば、武装したごろつきの集団など容易く皆殺しにできてしまう。そうなると表立って事を荒立てず、ひっそりと私欲を満たすための悪虐を尽くす日々を送ることになるだろう。
自分より弱い者をターゲットにして奪い、殺す。弱肉強食の摂理とは、まさにこの事である。
「ほかに聞きたいことはないか?」
ダージリンティーを一口含み、瞳を覗き込むような真っすぐな視線を向けてくる。その視線から言い知れない凄みを感じ、ティーカップに伸ばそうとした手が止まる。
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