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聞くことは最後に一つ、東支部の内情だが、中威区東部一帯の実情を聞く限り、聞いていいものなのか少し迷いどころではある。
任務請負機関に就職する以前、今後の方針を決めるため流川分家邸にて話し合った際、弥平が言っていた東支部の馴れ初め。粗方の背景は把握しているものの、やはり実情は現地人の口からでなければ正確な状況を把握することはできない。
弥平は巫市密偵任務に就いているし、知っておくならば今しかないが、彼女たちの神経を逆撫でするような言動をしてしまって明日以降の作戦行動に支障が出るようでは本末転倒だ。
なにせ澄男が既に好感度を落としている。メイドとして、藪蛇な行動は避けるべきだが、このままお開きにしてしまうのも勿体ない。さて、どうしたものか―――。
「では、私から一つ良いだろうか」
どういう切り口で話を広げていこうか。己のコミュニケーション能力を駆使してできる限りのシミュレーションをしていた矢先、意外にもエルシアから声をかけてきた。
予想だにしていなかったので、思わず間の抜けた返事をしてしまう。
「貴女はあの少年の専属メイドなのだろう? 何か強制されたりはしていないか?」
一瞬、質問の意図が図りかねて静止してしまったが、さっき澄男が起こした騒ぎを思い返し、なんとなく彼女の意図を察する。
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