メイドの談話

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「でも彼は私を``専属メイド``としてではなく、一人の``人間``として見てくれた……私をただの手駒として使いつぶすこともできたのでしょうに、それでも彼は……私と対等な対話を望んだ」  自分の漠然とした語りに静かに耳を傾けるエルシア。話にあまり脈絡がないにもかかわらず、そこを深く問い質す意志はなく、ただ黙して視線を交わすのみだ。 「だから……彼の事をあまり悪く思わないでください。先程の暴挙は決して褒められたものではないですが、彼は人一倍仲間想いの……気高い主人です。仲間に対する思いは、あなたがた護海竜愛(ごうりゅう)に劣りません」  青色の双眸を覗き込む黒い瞳の奥を、真っ直ぐに射抜いてみせる。  澄男(すみお)の人柄は確かに褒められたものではない。粗野で暴力的、自己中心的で傍若無人。かつて東支部を占拠し、彼女らを心身ともに虐げた者たちと紙一重の振る舞いをしてみせている。  レク・ホーランがいなければ、即刻この支部から立ち退けられていただろう。彼の知るところではないが、彼女たちが表立って澄男(すみお)を敵視しないのは、彼が新人であるからではなく、レク・ホーランの絶大な実績があってこそなのだ。  しかし専属メイドとして澄男(すみお)の人となりが誤解されたままというのは、些か不満が残る。  彼は一人のメイドを救い、そして各々繋がりのなかった自分たちを繋ぎとめ、``仲間``と称してくれた。ただ憎しみに駆られ、闇に堕ちただけではない。色々あれど、その葛藤の中で前を向いて歩くことを選択した男なのだ。  それが元来の性格だけで落とされるのは勿体ない。彼の信念はきっとこの東支部の危機も救ってくれる。なんだかんだ、彼は人としての甘さを捨てきれないことを私は知っているのだ―――。
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