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道着を着こなす女子に次いで上座に座る黒髪の女性が、レモン色のショートヘアの女子をギロリと睨む。
腰まで届くほど黒髪を靡かせる女性は、ただでさえツリ目だ。そんな女子が人を睨めば、その形相たるや完全に怒りに身を焦がしているとしか思えない。
だがレモン色のショートヘアの女子は、頭に両手を回し、目を逸らしながら口笛を吹いて飄々と誤魔化した。
「いやー、してーのは山々だけどよー……いーのか? またゲロ吐かれちゃ困るぜ隊長」
「ばッ……馬鹿を言うな! 報告程度でゲ……嘔吐するわけが……!」
「つって前の報告会ンとき盛大にゲロってたじゃねーか、説得力皆無だっつーの」
キシシシシ、と小悪魔的に笑うレモン色のショートヘアの女子と茶菓子を片手にぐぬぬぬと顔を真っ赤にして睨む黒髪の女性。緊張した空気が一変、年頃の女子が集まる女子会へと変わるが、そこに「静粛に!」と大声で異議を唱え、場の空気を引き締め直した女性が一人いた。
「ウィッパー、姉さんの御前だ。揶揄うのは大概にしないか。そして隊長殿。一々ムキになるのは大人気ないというものだよ」
緋色の長髪と赤いコートが障子の隙間吹き抜ける風で靡き、緋色の瞳が二人を射抜く。
黒髪の女子の瞳とはまた違う、情熱と強気に満ちた眼力。二人はそれに気圧され、汗を一筋滴らせながらお互いを見やった。
「前回の報告会の反省を活かし、隊長殿が嘔吐してもいいよう、既にエチケット袋は予備を含め沢山用意しておいた。抜かりないよ」
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