231人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
そう、彼がアプリ内に載せている写真は横顔一枚だけと、ラーメンの写真。
そんなんじゃ普通、女の子から「いいね」なんて返ってこないよ！などと思うけど
私の場合、間違えて「いいね」返しをしてしまって、新木先生と偶然マッチしていたのだ。
じゃなかったら、プロフィールもろくに書いていない男とやり取りなんてしない。
ただメッセージがすごく真面目で、他の遊び目的のすぐ会いたがる人となんだか少し違っていたから……
私の言葉に、新木先生は「たしかに」って呟くと
「あ、でもごめん、その……知らなかった。あそこの薬局で働いてる子だったなんて」
「気にしないでください。実は私も、先月異動してきたばかりで……新木先生のことも、チラッと何度かお見かけしたことあったから気づいたというか」
「そうなんだ……あ、じゃあ改めて自己紹介するね」
チケットの発券機に向かい、並んで歩き出す。
混み合う館内、隣を歩く先生は器用に人混みをすり抜けながら
「知ってると思うけど、新木紫乃です。歯医者さんです、えと、28歳」
「……ふ、藤野未祐です。事務やってます」
「店長さんベテランでしょ？たまーに疑義照会で電話してくるよね。ふふっ、少し怖い人だよね」
最初のコメントを投稿しよう！