230人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
新木先生は「今の内緒だよ」って小さく笑いながら、発券機の前でスマホを操作している。
映画のチケットは、前もって二人分買ってくれているらしい。チケット代は当日渡すと伝えてはいたけど、連絡を取り合っている段階で、すでに断られていた。
「(飲み物代くらいは私が出そう……)」
そんなことを考えながら、発券機からチケットが出てくるのをボーッと眺めていたら、新木先生はそれを取り
「未祐さんは、アプリで会ったのオレで何人目?」
「え?」
突然の質問に目を丸くする私に、はいとチケットを差し出してくれる。
何人目って……
まだアプリも始めて日が浅い。だけど女性って結構マッチングするから……えー、何人だろう。
すでに何人もご飯を食べに行ったりしていたけど、こういうときって正直に答えていいものなのか。
新木先生は気を悪くしたりしないかな……なんて、少し違う気もする。
「先生は何人くらいと会ったんですか?」
「ありがとうございます」とチケットを受け取りながら、逆に質問してみる。
すると彼は、まさか質問を質問で返されると思っていなかったらしく
「えーオレ?そうだな……3人くらい?」
「最近、始めたばっかりですか?」
「いや、同期に誘われて前からやってるけど。ほら、男ってそんな簡単にマッチしないからさ」
「なるほど」
「それにオレ、あまりプロフィールとか明かしてないし。まあ書かなきゃマッチしないよね、そもそも」
最初のコメントを投稿しよう!