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それから程なくして、映画が始まった。
感想を言えば、面白かった、すごく。
海外の映画、シリーズ物で子供の頃からよく観ていたから。
せっかく買ったポップコーンは、ほとんど口にしていない。新木先生はお腹が空いてたのかモソモソとよく食べていたみたいだけど。
途中、彼は飽きたのか居眠りしていた。自分から誘ってきたくせに……
別に全然関係ないのに、ちょっとだけ落ち込んだ。私といるの退屈だったのかなって。映画だから全然関係ないのに、ね。
「いや面白かったね」
「先生、少し寝てましたよ。お疲れですもんね」
うーんと背伸びしながら席を立つ新木先生に、多少の嫌味成分を含んだ言葉を返す。
そんな私に「耳で聞いてたもん」って、悪意のない笑顔を向けてくる彼に、私はそれ以上何も言わなかった。
いいのだ、これで。
「さっ、帰ろうか」と歩き出す新木先生の後を、小さな返事だけして追いかける。
「(ていうか、おなかすいた……)」
そういえば、仕事終わってから何も食べてないことを思い出した。結局ポップコーンもほとんど食べていないので、そりゃあお腹が空いてて当然だ。
少し遅い時間だけど、ごはんとか食べてから帰らないのかな……?新木先生はこのまま帰るつもりなのかな……
「あ、あの……っ!」
本当にこのままの勢いで解散しそうな彼の背中に、咄嗟に呼びかける。
「えと、新木先生は……何線ですか?」
「あ、オレ?」
「その、よかったら……」
そこまで言ったとき、彼は私の言葉を遮るように口を開いた。
「ごめん、この後いったん職場戻る」
「え?あ……そ、そうなんですか」
「シフト作らなきゃなんだよね」
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