【0】たぶん私はヒロインに憧れている

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私の小さいけど、とてつもなく重い質問に対して、元カレはテレビを観ながら 「お金貯まったら考えてるよ」 「それっていつ?」 「わかんないけど、だから実家帰るんじゃん」 「そしたら今の仕事は?また辞めるの?」 「そうだねえ……遠くなっちゃうから」 「(遠くなっちゃうからってなんだよ)」 「あはは」と笑いながら答える元カレに、そのとき初めてスッと気持ちが冷めた。 ああ、もうムリだ。 この人は一生変わらない。 涙すら出ないし、こんな人のために泣くのはもう嫌だ。私はこのまま後悔したくない。 膝の上の拳をギュッと握りしめると、未だにアホ面でテレビを観ている元カレにニコッと笑いかける。 「そっか、わかった」 そこからは早かった。 本当に、こういうときの女は強い。 私は勝手に新しい家を借り、1ヶ月後には元カレと同棲する家を出た。 「裏切んな」とか「勝手に出て行くヤツに家具は渡さない」とか、色々言われたけど 「とりあえずお金だけは返してくれる?15万」 今思えば、よくやったなってあの時の私を褒めてやりたい。  
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