7人が本棚に入れています
本棚に追加
成長?
「ーーーと」
一文字喉から溢して続ける。
「ーーートイレ、出来た…」
(※注意 これはトイレトレーニング中の幼児の話しではありません。中身はアラサー、見た目は15歳のマリオネットの台詞です)
あてがわれた部屋のお手洗いから出て来た幹きなこはその場にヘタリ込んだ。
「まぁ凄い!」
複雑な心境のきなことは対照的に、パアッと表情を晴れやかにしたのは昨日付けできなこの世話役となったナーシャ・ホルン。ふわぁっとしたニコニコ笑顔がチャームポイントの御婦人だ。
「今日は料理長に申し出てケーキを焼いて貰わなければなりませんね!」
この世界でも子供の成長を公表し、食事で祝う風習があるのだろうか?日本で言う赤飯みたいに。
だとしたら絶対止めて欲しい。
何故なら超が付くほど恥ずかしいから。
「別に何にも御めでたくないですから!」
「あら!きなこ様ったら奥ゆかしい!」
ナーシャは唇に指先をあて微笑んだ。
つい先程まできなこは危惧していた。
☓
昨日下町から帰った際、ナーシャ自慢の特製紅茶を一気飲みして、自分がマリオネットだと言うことを認識せず飲み物を口にしてしまったのを恥じた。
ーーーだって…
後になって液体が身体の何処かから染み出ないか不安でしょうがなかった。
理由は、身体の作りが人形なだけに、骨組みと綿っぽい何かと布で構成されてるのだろうときなこは思ったから。
なので、用意されたお姫様が使う様な総レース造りのベッドを一夜にして駄目にしてしまったらどうしようか悩んだ。
要するにきなこは『お寝しょ』が心配だった。おかげで朝になる迄寝た気がしなかった。
日は明けての早朝。
何時もの日課の様に尿意に駆られトイレに駆け込んで…
無事用を済ます事が出来今に至る。
☓
「きなこ様、昨日までは普通のお人形さんでしたのに、時間を追う毎に人間らしくなっていくのですね〜」
「そ…そうなんですかね?」
人体の不思議について考えるのは置いといて、今はナーシャの見解に納得するきなこだった。
最初のコメントを投稿しよう!