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手駒くんと一緒。
今日は朝市に連れて行けという王子の強い要望で、2日連続で街まで降りたきなことリューク王子。
出店を2人で見学してた時だ。
猪突猛進してきた戯け者が1名。
「ここで会ったが百年目ぇ!」
脚で急にブレーキを掛けたせいでその場に舞う砂埃。
極最近見知った顔に、きなこは眉間を顰めた。
「出た」
「『出た』言うな!俺は化物じゃねー!」
リューク王子は冷静な眼差しを彼に向ける。
「昨日会ったばかりの悪人面ではないか。たった1日と百年の違いも分からぬのか。その歳で耄碌するとは…悲惨だな」
「なっ何だこのガキは!いったい何様だ!」
(王子様だよ)
真実を突っ込めないきなこは喉元で言葉を飲み込む。
こめかみに青筋を浮かべる彼にきなこはまるで暴れ馬をなだめるかの様なジェスチャーを両手でとる。
「どうどう。確か、ゼロくんって呼ばれてた子だよね?」
「ああん?お前、歳上に嘗めた口聞くんじゃねーよ」
ゼロに詰め寄らたきなこは気まずそうに地面に視線を逸らせた。
「君の方が歳下だよ」
二十歳そこそこの彼の言動に、呟く元アラサー女子きなこ。
そんな彼女の言葉はゼロの耳には届いて無い様だ。
リューク王子は肩をすくめる。
「この朝市は騒々しいお前の来る所では無い。早くあの酒場に帰れ」
「このままで店に戻れるか!たったガキ2人逃したとくればこのゼロ様の面目が立たねーんだよ!」
ゼロはファイティングポーズをとる。
「おじょーちゃん、相手しろや。万が一俺に勝ったらお前の舎弟になってやる!」
(何故に。)
昨日手合わせしたリューク王子の側近、ドラシスといい、ゼロといい、この世界は決闘を好む者が多いのだろうか?
だとしたら疲れる。
きなこは重いため息を吐きながら仕方無く目を閉じた。
マリオネットモードを存分に活かす為に。
☓
斯くして。
街で名を知らない者が居ない(本人談)『ゼロ』がきなこの手下となった。
続く。
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