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ヨーロッパの博物館らしき場所でゾロゾロと現れた綺羅びやかな衣装を纏う人々の登場に泣きそうになったのは幹きなこだ。
「ちょっ!?待っ!えっ?誰ぇ!?取り敢えずこっち来ないでぇ!」
まるで何処かの屋上から飛び降りそうな自殺志願者の如くきなこはテンパってる。
きなこはその場に蹲って前を隠した。
「なんですかアナタたちはぁ!?」
その慌てっぷりに反して王子とドラシスは冷静に対処した。
「私の名はドラシス・スコッティ。こちらにあらせられるのがリューク・レフレックス様。我が国の第一継承者であらせられる」
「ーーーで?」
王子は冷たい視線を不審者、きなこに向け続けた。
「母君が生前大切に扱っておられたマリオネットが何故ひとりでに動いている?糸はどうした」
「…マリオ、ネット?」
王子の問にきなこの眼が丸くなる。
「私、操り人形に生まれ変わった…わけ?」
糸なんて初めから付いて無いのに。
「何を戯けた事を吐かす」
眼力を強めたドラシスは続ける。
「王子。こやつは低級霊が憑依し王妃様の忘れ形見を乗っ取っているかもしれません。早急に霊媒師に払わせ消滅させるのが最善策かと」
助言をするドラシスを他所にに王子は何やら考えを巡らしている様だ。
「お前名は?」
「…きなこ。幹きなこだよ」
「王子様に向かって何たる口の聞き方をする!」
お付きの叱咤にきなこは首を竦める。
「えと、きなこと申します」
これで良い?
きなこはおずおずと王子の取り巻きに目線を返す。
「そなた足は速いか?」
「へ?」
遅い方ですが。と答える間もなく。
「身軽か?」
「あの…」
「王子」
2人の会話に割って入るドラシス。
「間に受けてはなりません。前王妃様が娘の様に世話をしてきたマリオネットが勝手に動くなど霊の仕業でなければ有り得ません」
何を根拠に。
歯向かおうとしたきなこはドラシスを凝視した。
ーーーあれ?
「って!?黒崎課長!?」
元OLのきなこが慌てた理由は、ドラシスが自分の上司そっくりだったからだ。
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