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転生したばっかりですが…忙しい!
「きなこ。今から下町に行く。お前も付いて参れ」
「へ?」
幼い王子から直接命を受けたのは、本日転生したばかりのきなこ。
きなこは与えられた豪華絢爛な部屋を持て余しているところだった。
☓
生地は上等だが粗末な衣服、長袖シャツと半ズボンに着替えた王子ときなこ。
「着きました」
馬車の中で同行するドラシスによると、王子は民のありのままの暮らしを視察するため週に一度下町に降りると言う。
きなこ達の設定はこうだ。
足に包帯を巻いた王子、弟を抱く姉。ソレがきなこの役らしい。
狙いは群衆に溶け込める様に。
王子はきなこの首元に細い手を廻した。
「王子様軽いですねー」
「うるさい。黙れ」
体重の重い軽いは多感な時期の少年にとって禁句らしい。
「すいませんリューク王子様」
立ち上がって歩き出すきなこは俺様な主にヤレヤレと内心肩をすくめた。
「下町では王子と呼ぶな。正体がバレると後々面倒くさい」
「ではなんとお呼びすれば?」
「勝手に決めろ」
きなこはあさっての方角を眺め悩む。
「リューク…って呼び捨てだと流石に馴れ馴れしいか」
第一そう呼んだらドラシスに瞬殺されそうな気がする。
「リューク君、リューくん。あ、其れが良い!街に出ている間はリュー君って呼ばせて貰います!」
王子はそっぽ向いた。
「好きにしろ」
(あれ?王子なんか照れてない?)
ふふ、と笑みをこぼすきなこに。
「ヘマやらかしたら燃やすぞ」
「怖ぁ!」
ドS王子様の発言に泣きそうなきなこだった。
☓
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