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ーーーちょっと待って。
展開が…
展開が早過ぎる!
☓
事の発端は、王子が以前から行ってみておきたい場所としてノミネートした宿屋兼酒場にて起こった。
☓
約数分前。
テーブル席に座ったきなこはコッソリと隣りの王子に話しかけた。
「なんか此処、ガラが悪くてゴツい人の巣窟的な気がするんですけど!」
早くこの場から立ち去りたいきなこは王子の服の袖をチョイチョイと引っ張る。
そんな彼女を他所にオーダーした紅茶を一口飲んだ王子は眉を顰めた。
「不味い。
きなこ、美味い紅茶だ。お前にやる。全て飲み干すが良い」
ティーカップを受け皿ごときなこの前に差し出す王子。
「リュー君、今『不味い』ってハッキリ言いましたよね!?」
王子へと紅茶を返そうとした時きなこの手元が狂った。
弾みでカシャンと音を立てひっくり返るカップ。
中身の液体がテーブルからはみ出し弧を描いた。
「熱っ」
飛沫が飛んだのはきなこ達の側で立ち呑みをしていた『ガラの悪い人』代表の様な人物。年齢は20歳そこそこだろうか?酒場の中でも一番異彩を放っていた。
「オイ、ガキンチョにねーちゃん、この俺様に何やらかしくれてんだ」
男は紅茶がかかった腕を掲げる。
「火傷しちまったじゃねーか慰謝料寄越せ」
「すいません」と小声で謝りながら青褪めるきなこを差し置いて、王子は足を組んだ。
「おかしいな。先程の紅茶は既に熱を失っていた。あんな温度で火傷するようなか弱い皮膚なら予めアロエ軟膏でも塗っておけ」
あまりの王子の横柄な態度に、きなこはこの世界にも『アロエ軟膏』が存在するのだな。と率直な感想を持ってしまった。
王子は続ける。
「なんなら全身に塗りたくると良い。さすればそなたの悪人顔も少しはマシになるんじゃ無いのか?万能薬だからな」
王子の挑発にハッと我に返るきなこ。
「リュー君失礼でしょう!こういう人がタイプな女性だっているのですよ!」
些か見当違いなフォローをする。
熱り立つのは『悪人顔』呼ばわりされた狼の毛皮を羽織った男。
「ねーちゃんそれで慰めてるつもりか!?」
「そうだ。コイツがタイプな女なぞいる筈が無かろう」
男の傷口に塩を塗りたくる王子。
「居ますよ!田口さんとか中原さん!」
「誰だよ!?」
ツッコミをいれる男。
「OLの元同僚です!」
半ばヤケになるきなこ。
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