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梶と九十九は小学校の頃からの仲らしい。中学校は学区が別で離れてしまったが、高校で再会してからまたつるむようになったのだそうだ。長い付き合いだけあって、お互いのことをよく知っている。
「梶んちはねー、すげー面白いよ。きょうだい全員、おんなじ顔。両親もおんなじ」
「ははっ、マジ? 見てみたい」
「おんなじではねーよ。つーか、きょうだいはともかく、オトンとオカンが同じ顔はおかしいだろ」
「や、同じだよ。夫婦って顔似てくるっていうじゃん、あれマジなんだなーって俺、思ったもん」
梶が四人も弟妹のいる長兄だと知り、俺はとても納得した。彼があふれんばかりに纏っている、頼りがいと包容力のありそうなオーラは、お兄ちゃん特有のそれだったのだ。一人っ子の俺にはどれだけ人生経験を積んでも得られないものかもしれない。
そんな梶は俺を野球部に勧誘してきたのだが、俺は丁重に断った。
「でも中学は野球部だったんだろ? なんで辞めちまったの?」
「運動苦手なんだよ。でも全員、部活参加しなきゃいけない決まりだったから」
谷神西高校の野球部は、強豪とはいえないまでもそこそこの成績をおさめているようだ。弱小ならともかく、そんな気合いの入ったチームの練習についていける気はしない。
「九十九はなんか部活入ってんの?」
「うん、一応。研究会だけど」
「へえ。何?」
「古代生物研究会」
研究会といえば落語か漫画くらいしか浮かばなかった俺にとって、その答えは予想の斜め上だった。「去年は二回しか活動しなかったけどね」と続いた言葉に、やはり気が抜けたけれども。
「古代生物って何。恐竜とか?」
「そう。博物館行った」
「それが二回のうちの一回? もう一回は?」
映画観に行った、と九十九は昨年話題になっていた恐竜映画のタイトルを挙げた。なるほど、そこまでゆるい研究会なら入ってみてもいいかもしれない。と思いつつも、あまり古代生物には興味の持てない俺だった。
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