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「あとで少し買い物でも行こうか。必要なもの、リストアップしとけ」
叔父さんは言いながら、よっこいせという感じで腰を下ろした。
さほど上背はないが、肩幅が広くがっちりした体つきのため、威圧されるような存在感がある。叔父さんの受け持ちは数学だが、そういえば、よく体育教師に間違われると言っていたな。
淹れてもらったお茶に手をつける前に、俺は正座のまま背筋を伸ばした。正面に座った叔父さんの目を見つめると、叔父さんも湯飲みに伸ばしかけていた手を止めた。
膝に乗せた拳を握り、息をぐっと詰める。
「ふつつか者ですが、お世話になります。これからよろしくお願いします」
できるだけはっきりした声で言って、俺は頭を下げた。「なんだ、改まって」と叔父さんは少し笑う。
「お前が生まれたとき、アコちゃんと約束したんだ」
湯気のたつお茶をズズッとひとくち啜ってから、叔父さんは静かに言った。
「自分にもしものことがあったら、与留を頼む、ってな。……縁起でもないこと言うなって、そのときは叱ったもんだけど」
まさか本当に置いていっちまうなんてなあ。独り言のように低く呟く。
それから強い眼差しを俺に向けた。その瞳は優しくて、まっすぐで、小さい頃から知っているそれと何ら変わらない。
「俺にはいくらでも迷惑かけてくれていい。遠慮はするな。幸い独り身だ、お前の面倒を見るくらいの余裕はある」
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