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そこまで考えていたら沿道に紫陽花がちらほらと見えてくるようになった。
ここから先から駅前にかけて沿道には紫陽花が植えられている。
六月、七月になると紫陽花が見ごろを迎えてここら辺一帯は紫陽花が青色、紫色といった色とりどりの色に染まる。
それは花を見る目がない僕でさえもその頃のここらの景色は思わず綺麗だと思ってしまうほどに綺麗で、絶景とまではいかないまでも誰かにおすすめしたくなるような景色だ。
強く自分を主張するわけではなく、言葉で言い表すならば慎ましやかという言葉が似合う綺麗さが特に好ましく感じる。
五月の今頃はまだ見ごろではないけれども、ちらほらと色づき始める紫陽花を眺めていると、何だかここ最近の暑さを忘れてしまいそうだ。
そんなこんなで歩いていたら踏切の音が聞こえてきた。
踏切の前に僕が通う高校の制服を着た女の子が立っている。
いや、前じゃない。
踏切の中にいる。
辺りには人がいなくてその女の子はただ一人踏切の中で立ち尽くしていた。
こんな光景目にしたことなんてないし想像したこともない。
鳴り響く踏切の音が大きく感じてきて胸がどきどきし始める。
彼女は死のうとしているのだろうか。
だとしたらこのままじゃいけない。
止めなきゃ。
僕は踏切の中で立ち尽くす彼女を目掛けて走り出した。
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