麻雀青春物語【カラスたちの戯れ】一日一度はメンタンピン編

2/44
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
1話 ◉メタと雷神  今日はSNSサイトの麻雀オフ会だ。  こういう集まりに参加するのは初めてのことなんだが、でもいつも絡んでる麻雀コミュニティの人たちなんだし怖いことはなにもないだろう。その麻雀コミュニティは6000人登録を超える大世帯コミュニティだったが、さすがにオフ会にそんなに大勢は集まらない。といっても20人くらいは集まって雀荘で麻雀大会をしたわけだが。  その時のおれはかなり失敗続きだった。仕上げのリーチまで持っていってもリャンメンだろうが3面張だろうが単騎とペンチャンに尽く敗れていた。そんなゲームで一回戦を落とした二回戦目。二回戦目に突入しても変化はなく同じように負けていてラス落ちしてる東4局。  隣の卓は東場で終わったようで、1人こちらをジッと見ているヤツがいた。(そんなに見られても多分面白いことは起きねえぞ。今日はまだノー和了なんだからな)と思って開いた配牌が。 一一赤五②②④⑥22369白 北家でドラ北  第一ツモでここに四。(第一ツモの手ごたえは抜群だが。さて、どうする…。  普通なら9だろうな。1番ロスはない。そりゃあ知ってる。だが、そんなことしても何の打開策にもならないんだよ。何か手はないか。何かスペシャルな一手は。……よし!)    意を決して選択した第1打は一切り。対子落としスタート。  2巡目も一を切り対子を捨て牌に並べる。  その後ポンしてチーして 四赤五六2266 2(④⑤⑥)(②②②)    この500.1000の1枚をツモあがる。  そこから調子を取り戻して二回戦目はなんとか2着で終わることが出来た。すると 「君!」  後ろで見てた男が急に声をかけてきた。   「なんですか?」 「ハンネは?」 「え?」 「ハンネだよ、ハンドルネーム」 「あ、ああ、ハンドルネームね。おれはメンタンピンです」 「ああ君がそうか」 「おたくは?」 「雷神」 「!」 「おれがあの雷神だ。それよりメンタンピンよ。君の麻雀、良かった。とくに東4局1巡目の解説出来るやつはこの世に10人いるかどうかだけど、おれにはわかるぜ。ドラを利用したんだろ。  たいしたものだ、あの手からチートイツを見切ってスタート出来るやつはそうはいない。  対子落としから始めることで手の速さを偽装して、北家である自分へドラの北をもう切れないものと勘違いさせる。相手が手をこまねいている間にポンしてチーしてアガリ切る。そんな手順はもはやオリジナルだ。素晴らしかった」 「まさか分かってくれる奴がいるとは。雷神、おまえやるなぁ。さすが」 「おまえもな、メンタンピン」 「メタでいい」 「そうか」  おれとアイツの出会いはそんな2000点の1枚から始まった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!