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3話
◉鬼の卓
今日はメタの初出勤だ。
アキラとコテツで仕事を教える。
まだ、店は暇な平日の午前中なので雑談しながら色々と教えていく。マネージャーは午後出勤だ。マネージャーが出勤する前に来客があった場合はマネージャーのカゴでメタを打たせていいと指示はもらってる。まあ、昼前に来るお客さんはあまりいないので多分大丈夫だろう。
「なあ、なんで雷神はここで働くようになったんだ?」
「あ?ほっとけよ。俺のことはどうでもいいだろ」
コテツはシオリに恋をしてここで働くようになったものだから恥ずかしさから話を即刻打ち切った。
「
「アキラだまれ」
「まだ、口開けただけだよ」
まだ、何も言ってないうちに先を読み切ってコテツが被せてくる。確かにアキラはいま喋ろうとしていたがあまりにもツッコミが早すぎるだろう。
「ほら、来客だぞ。教えた通りおしぼり準備して」
と、コテツは指示を出すが、その来客というのはどうしてわかるのだろう。まだ扉は開いていない。
「じゃあ髙橋さん、お客さん入ってきたらおしぼり出して挨拶してね」
「あ、ハイ」
すると、耳を澄ますと階段を登る足音が聞こえてきた。
(もしかしてあれが聞こえてたってこと?あの言い出したタイミングだと階段の下の時には気付いてたってことになるがココは3階だぞ?!よく聞こえるな)
相変わらずコテツの耳の良さは異常であった。聴力が抜きん出ているコテツにはこの足音だけでだれが来たかもわかってた。この足音はサンダルを履いた大男。多分、ジンギだ。
カランコロン
牛鈴が鳴る。やはりジンギだった。ジンギは相変わらずイケメンだ。胸まである長くてツヤのある真っ黒な長髪。それがまた格好いい。この長髪は男前にしか似合わないように思えた。
「いらっしゃいませ。おしぼりをどうぞ。お飲み物は何に致しますか」
「コーラ。きみ新人?」
「はい。コーラですね。待ち席までコーラお願いします。
新しく入店しました髙橋です。よろしくお願いします」
「おれは北山。ここではジンギって呼ばれてるから。よろしくな」と言って挨拶を交わすとジンギは腕に付けていたゴムで長髪を後ろに一つ結びにする。それはジンギの戦闘準備だ。
「わかるんだよオレ。勘だけはいい方だからな」
「わかるとは、なにがですか?」
「キミ、強いだろ。おれの直感がそう言ってる」
(相変わらず鋭い野郎だ)とコテツはジンギの野生の勘に自分と同じものを感じる。
「今日は楽しい卓が組めそうじゃないか。ツイてるぜ」と、ジンギは心から嬉しそうにしている。
鬼の集いのような卓でメタのデビュー戦は始まった。
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