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森の中
「おい、そこの女たち。金目のモノがあったら置いていけ!」
5人の男たちが道を塞いでいた。面倒な奴らに見つかったわね。かよわい可憐な女性を狙うなんて大した実力はなさそうだけど。
待てよ…。ん? 女たち? 複数形? 私は後ろを振り返った。すると、私のすぐ後ろに女の子がいた。彼女は私を見つめていた。
『旅は道連れ世は情け』と言うし、仕方がない。これも何かの縁だろう。私は男たちに向かって正直に言う。
「私、お金は持っていないわ」
「だったら、一緒に来てもらおうか」
「嫌だと言ったら?」
「無理やりにでも連れて行くまでだ。お前たちは高く売れそうだからな」
「あなた達では高くて買えないでしょうね」
「なんだと!」
私ひとりならば、どうにでもなる相手だ。けれども、ひと目につく行動は好ましくない。ここは穏便に済ますとしよう。
私はこっそりと帽子に付いていた羽根飾りを投げた。すると、男たちの前につむじ風が出現した。男たちは、ヒュルルル~とつむじ風の内部に取り込まれた。
「あ~れ~っ! 助けて~」
男たちは、つむじ風に飲まれて遠くに運ばれて行った。
「火山の噴火口にでも落ちると良いわ」
さて、この子はどうしたものか? 私が思案していると、彼女が先に口を開く。
「飛ばされちゃったね」
「自然現象は怖いわ。さっきのは、つむじ風ってやつ?」
「つむじ風?」
「たぶんね」
「私はミクク。芸術家のアシスタントなの。お姉さんは何をしている人?」
「私はただの旅人かな」
「へぇ、すごい。いろいろな場所に行けるね」
「ミククはこれからどこに行くの?」
「私はアトリエに戻るところです」
「そうなの。では、途中まで一緒に行きましょうか?」
「はい」
たまにはこういうのも良いだろう。今日はぶらり2人旅となった。
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