森の中

1/3
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

森の中

「おい、そこの女たち。金目のモノがあったら置いていけ!」 5人の男たちが道を塞いでいた。面倒な奴らに見つかったわね。かよわい可憐な女性を狙うなんて大した実力はなさそうだけど。 待てよ…。ん? 女たち? 複数形? 私は後ろを振り返った。すると、私のすぐ後ろに女の子がいた。彼女は私を見つめていた。 『旅は道連れ世は情け』と言うし、仕方がない。これも何かの縁だろう。私は男たちに向かって正直に言う。 「私、お金は持っていないわ」 「だったら、一緒に来てもらおうか」 「嫌だと言ったら?」 「無理やりにでも連れて行くまでだ。お前たちは高く売れそうだからな」 「あなた達では高くて買えないでしょうね」 「なんだと!」 私ひとりならば、どうにでもなる相手だ。けれども、ひと目につく行動は好ましくない。ここは穏便に済ますとしよう。 私はこっそりと帽子に付いていた羽根飾りを投げた。すると、男たちの前につむじ風が出現した。男たちは、ヒュルルル~とつむじ風の内部に取り込まれた。 「あ~れ~っ! 助けて~」 男たちは、つむじ風に飲まれて遠くに運ばれて行った。 「火山の噴火口にでも落ちると良いわ」 さて、この子はどうしたものか? 私が思案していると、彼女が先に口を開く。 「飛ばされちゃったね」 「自然現象は怖いわ。さっきのは、つむじ風ってやつ?」 「つむじ風?」 「たぶんね」 「私はミクク。芸術家のアシスタントなの。お姉さんは何をしている人?」 「私はただの旅人かな」 「へぇ、すごい。いろいろな場所に行けるね」 「ミククはこれからどこに行くの?」 「私はアトリエに戻るところです」 「そうなの。では、途中まで一緒に行きましょうか?」 「はい」 たまにはこういうのも良いだろう。今日はぶらり2人旅となった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!