6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
アトリエ
街のアトリエ。店の主人がずっと入り口を見ている。落ち着かない感じだ。その男はひと差し指と中指で机の上をカタカタと叩いている。
ちょうどその時、外から足音が聞こえ、扉が開いた。扉から女の子が入って来る。
「ミクク、遅かったじゃないか?」
「ごめんなさい。アポポさん。帰り道に山賊と出会って…」
「何!」
「あっ、でもね、お姉さんと一緒だったから大丈夫」
「それは良かったな。その方は?」
「旅人らしいの。途中で分かれたわ」
「無事で何よりだ。だがな、山賊たちには私が直接話に行ってこよう。話せば分かるはずだ。奴らが話せればな!」
アポポは考えていた。ミククの独り歩きは危険かもしれない。私がずっと一緒にいられたら良いのだが、そうもいかない。使い魔に任せてみるか? ミククに似合う使い魔か…それは何だろう?
「アポポさん?」
「なんだい?」
「スイカの苗を買ってきたの。庭に植えておくね。実が生りたら一緒に食べましょ」
「…そうだな」
「スイカが大きくなるように毎日私がお世話するわ」
ミククは何て優しいんだ。邪神と恐れられ、数多の屍を築いてきた私のためにスイカを育ててくれるとは!
山賊だろうが、海賊だろうが、盗賊だろうが、ミククに近づく者は私が始末する。アトリエは邪悪な気配に包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!