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飛竜は雨に敏感だ。
手紙や荷物も防水の袋に入れてあるとはいえ、長時間雨に濡らすわけにはいかない。
飛竜もまた少しくらいの雨ならどうということはないが、強く降れば降るほど人が乗りこなすのは難しくなる。
何せ竜という生き物は水が大好きで、大雨の日には我を忘れて空を駆け回ると言われている。
郵便局にいる飛竜たちは自由に飛び回ることのないよう訓練されているし、雨の中を飛ぶことも禁止されている。局員が苦労して見つけてきた竜がいなくなってしまっては大変だからだ。
幼い飛竜を捕まえて飼い慣らすことで、どうにか配達に使えるようにするのだが、雨は飛竜にとって麻薬のようなものだ。何年もの苦労が一瞬で水の泡にならないよう、ターカーたちは雨宿りできる場所をいくつもおさえているという。
セキが妹のマウルと住んでいるのも、もとはそんな雨宿りの拠点のひとつだった。
飛竜が楽に休める広い倉庫のような場所で、雨が降るとトタン屋根を叩く雨音は他の全ての音をかき消してしまう。
仕事を終えて家にもどると、そんな雨音の中、6歳のマウルは兄の帰りを待っていた。
近くに木の椀が転がっている。
苦しげに肩で息をするマウルにセキは駆け寄った。
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