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「マウル! また発作が起きたのか」
たいてい、低気圧の日にはマウルは喘息の発作を起こす。セキは急いで薬をマウルに飲ませた。
本当は雨の日にこそ、飛竜を見つける絶好のチャンスなのだ。
普段ひっそりと人のいない山奥や谷底に潜んでいる飛竜たちが、雨空に踊り出す。それを追いかけていけば、飛竜の住処を見つけることができるかもしれない。
ただ、空を翔ける竜を人間の足で追いかけることは難しい。
何日も探し歩いても、見つけられるかどうか分からない。
飛竜はその数じたいが年々減り続けている。
運良く見つけられたとして、飛竜と仲良くなれなければ連れ帰るのは難しい。
それに病気がちな妹をひとり残してはいけない。
妹の小さな背中をさすってやりながら、セキは外の雨音の中に竜の声がしはしないかと耳を澄ませる。
どうしても探したい人がいる。それには飛竜が必要だった。
数を減らしている飛竜を捕まえることが許されているのは郵便局員だけ。
セキは一日も早くターカーにならなければならない、強くそう思いながらも、セキの服の裾を握りしめる小さな手を振りほどくことはできなかった。
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