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分厚い雨雲のせいで日暮れは早く、セキとマウルは並んで硬い寝台に横になって雨音を聞いていた。
ロウソク一本が照らすだけの暗い倉庫の中では、他にすることも無い。
「兄ちゃん、知ってる?」
「何を」
まどろみかけていたセキはマウルの声に目を開いた。マウルの瞳だけがロウソクの灯りを映して星のように輝いている。
「ほら、トン、トンて」
マウルは雨音を追いかけるように天井を指さす。屋根全体を叩く雨音に混ざって、時々大きな音がするのは、木の実が屋根に落ちた音か、たまたま大粒の雫が落ちたのか。
「あれは竜の足音だよ」
「えっ」
竜という言葉に驚いたものの、本当に竜がこの家の屋根にいるはずもない。
「竜の足音か……」
「父ちゃんが言ってた。竜を探しに行った時、雨音を頼りに竜の後を追ったんだって」
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