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ポツ
ポツ……
雨だ。
頬に落ちてきた一粒の水滴に誘われて、私は空を見上げた。
空には、少し前から重たそうな雲が広がっていて、今にも雨が降りそうだとは思っていたが、とうとう降り出してしまったようだ。
傘はない。本格的に降り出す前に自宅へ戻ろう。
私は、歩みを速めた。
ポツ、ポツ……
私の歩みを追うように、雨が私を追いかけてくる。雨音に急かされるかのように、私の靴音も、次第に高く早くなる。
ポツ、ポツ、ポツ……
自宅まであと数メートルというところで、地面にできるシミの数が増えてきた。
あと少し。なんとか間に合って。
私は、堪らず駆け出した。
このくらいなら、まだ大丈夫。
私は、耳を塞ぐことよりも、自宅へ帰り着くことを優先させる。
ポツ、ポツ、ポツ、ポツ……
地面の色が濃くなり出した頃、無事に自宅に帰り着いた私は、家の中へと飛び込む。
ほんの少し濡れたけれど、これくらいなら平気だ。
靴を脱ぎ、荷物は玄関に残したまま、脱衣所へ向かう。詰んであるタオルの山から、お気に入りのフワフワの白いタオルを取り、髪や顔、手なんかの濡れたところを拭った。
本格的に濡れたわけじゃないから、風邪をひくことはないだろう。
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