ザーザーザーザーザー

2/2
前へ
/17ページ
次へ
 コードレスのイヤホンをそれぞれ左右の耳に填め、私はベッドへと潜り込む。布団の中で、スマホを操作し、音楽をかける。音楽と言っても、最近流行りの曲を選んでしまうと、気分が高揚して逆に眠れなくなってしまうので、こういう時にスマホから流す音は決まっている。  小川のせせらぎ。これ一択である。  雨の音が嫌だというのに、チョロチョロサラサラと流れる水の音は平気。むしろリラックスできるというのは不思議な話なのだが、世に言う「1/fの揺らぎ」というものは、私にも効果があるような気がするのだ。  目には目をじゃないけれど、水には水で対抗して、私の脳内を雨音からせせらぎへと塗り替える。  ザーザーザーザーザーと、まるで、こちらを見ろと自己主張しているような窓の外の音に意識が向かないように、目を固く瞑り、チョロチョロサラサラと流れる水の音だけに集中する。  流れに身を委ねていれば、やがて、私は本当にその流れに流されているように、どんぶらどんぶら眠りへと誘われていく。  窓の外では、相変わらず、ザーザーザーザーザーと、雨音が私を眠りから引きはがそうと騒いでいるようだが、どうやら今日は上手いこと眠ることが出来そうだ。微睡の中、ホッと安堵の息を吐く。  いつもこうだったら、雨音なんか怖くないのに……
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加