ケサランパサラン

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 イヤホンを外し無造作に机の上に置く。随分と静かになった窓の外が気になり、カーテンの隙間にそっと手を差し込んだ。窓の外を覗いてみる。無数の水滴で、窓の向こうが少し歪んで見えた。  それでも、雨が降っていないことは分かった。しかし、残念ながら雨上がりの晴天ということでもない。明け方だからまだほの暗いのはそうなのだが、それにしても、なんだか奇妙な外の光に、私は思わず窓を開ける。  ほの暗いのに何故だか周囲に光を感じながらベランダへと出ると、雨の名残がそこかしこにある。ベランダ用のサンダルも、しっかりと濡れそぼっていたが、素足でベランダに出るのが嫌で、仕方なくそれに足を入れた。  出しっぱなしにしていた鉢植えが、雨の勢いに負けたのか横倒しになっていた。幸い、中の土はあまり流れ出ていないようだ。鉢植えを起こし、少し出てしまった土を鉢の中に戻すため、両手で掬う。雨でぐっちょりと濡れた土は、手にこびり付いて気持ちが悪い。鉢の縁に泥を擦り付け、不快感に眉を顰めていると、微かな音が聞こえたような気がした。  小鳥のさえずりか。  いや、違う。  近所の犬のキュンキュンという鳴き声か。  いいや、違う。  少し向こうの通りを走る、車の音か。  全然、違う。  目を閉じて、その音に意識を集中させる。  ……ラン……パサラン……ケサラン……パサラン……
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