ケサランパサラン

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 なんだ?  周囲を見回してみても、音の出どころらしき物は見つからない。  ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……  それでもやっぱり聞こえる。眉を顰めている間にも、不思議な音はだんだんと近づいてきているような気がする。  ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……  初めは微かだったその音が、今ははっきりと聞こえる。  ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……  ハッとして見上げた私の鼻先を、白いものがフワリと掠めていった。思わず両手で包むようにしてそれを捕まえる。  咄嗟のことに、考えるよりも先に体が動いてしまったが、果たして素手で捕まえても大丈夫な物だったのだろうか。  恐る恐る両手を目の高さまで上げる。手の中に何かがいる感触はない。きっと捕まえ損ねたのだろう。そっと指の隙間から手の中を確認してみた。  パチクリとした2つの目玉と視線がぶつかる。  声にならない叫びと共に、捕まえた形のままの手を思いっきり伸ばして顔から遠ざけた。  なんだ今のは?  何かを捕まえたままの手を見つめる。手の中には、やはり、何の感触もない。  疲れ目のせいで、見間違えたのだろうか。
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