ケサランパサラン

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 しばらく手を開くことも出来ずじっとしていた。しかし、何かが手の中で動く気配はない。  特に変化もないので、意を決して離していた手をゆるゆると引き戻す。耳を傾けてみた。モゾモゾと動く音もしない。  ずっとこのままというわけにもいがないので、えいやっと勢いに任せて両手を開いてみる。  何もいなかった。  安堵の息を吐き、それからはハッと息を呑んだ。泥だらけのはずの手のひらが、粉をはたいたように真っ白になっていた。  やっぱり手の中に何かいたんだ。  得体の知れない恐ろしさが背筋をゾゾゾと駆け上る。その時またあの音が聞こえてきた。  ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……  ばっと空を見上げると、向こうの空に白い筋がひとすじ見えた。  私はサンダルを脱ぎ捨て、部屋へ駆け込む。窓をピシャリと閉めれば、あの不思議な音は聞こえなくなった。  ホッと胸を撫で下ろし、怖い物見たさでもう一度窓を開けてみる。  窓の外は、先ほどの薄明かりの景色から一転、雨上がりのすっきりとした晴天に光り輝いていた。もちろん、あの不思議な白い筋も見当たらない。  しかし、首を傾げた私の耳には、またあの音が聞こえた気がした。  ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……
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