パラパラ

1/2
前へ
/17ページ
次へ

パラパラ

 本をキリのいいところまで読み終えて、ふと顔を上げる。  やはりこのフワフワの白いタオルは、集中するのにもリラックスするにも必要不可欠なアイテムだ。  タオルの端を触りながら、集中できていることに満足する。  すっかり冷めてしまった少し酸味のあるローズヒップティーを口に含み、そう言えばと腰を上げて窓へと歩み寄る。窓に掛かるレースのカーテンを少し開け、外を眺めてみるが、随分と暗くなっていて窓越しにはよくわからない。  ほんの少しだけ窓を開けてみれば、すぐにその音は室内へと入ってきた。  パラパラ……  気弱な雨が、ベランダを打つ音がする。  まだまだ大丈夫だ。  窓をそっと閉めて、私はローズヒップティーをもう一口飲むと、再びソファに腰掛け続きのページを開いた。  パラパラ、パラパラ……  先ほど室内へ入れてしまった雨音が、私の気を引こうと懸命に音を奏でている。  まだまだ、これくらいなら大丈夫。  それでも念のためと、被っているタオルを顎の下でキュッと結び、ほっかむりよろしくしっかりと耳を塞ぐ。程なくして、案の定私は本の世界へのめり込んでいった。  ページを捲る手が最後のページを捉え、私が再び顔を上げた頃には、時計の針は随分と進んでいた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加