Highlander JK【Japan Knight】

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其れから暫くして私はお屋敷を半ば飛び出すように出て行った、下女ではあったが妙に自尊心と誇りが高く、もしお屋敷内で忠時様と出くわしたものならどうなるか、この歳になれば重々理解していたから飛び出した、しかし行くあてもなく金子(きんす)も殆どない他のお屋敷で奉公も考えたが島津のお屋敷を飛び出したのだ事実上この薩摩では行き場はない、このまま琉球へ戻るも考えたが武士の時代を感じていた私は京に向かうことにした、武士でも何でもないただの下女ではあったが思い立ったが吉日と支度を済ますと北を目指したのだ。 たが早々と久七峠で山賊に捕まると多勢に無勢あっさりと捕縛され手篭め覚悟であったが頭目が面白い男でみっともなくも女だてらに闘う私の姿を大いに気に入ったらしく自分の手下にした。 とんだ成り行きで侍を目指したつもりが山賊に堕ちた私はとりあえず頃合を見つけて抜け出すつもりでいたが山賊稼業もいつの間にやら二年間が経っていた。 「おいさくらよ、お前はなんでそんな長いもん振り回すよ?」 「侍が刀振り回して何が悪い!」 「ハッハハ侍か、そりゃご立派だ、なぁ徳兵衛よ」 「笑うな!じゃぁ手合わせしろよ逃げ回ってないで」 頭目は二本の脇差を私に投げやり振ってみろと言った、こんな短い得物じゃ相手に届かないと言うといいから振れと言われたので私は振ってみた、が… 「⋯ありゃ、こりゃ具合がいいわ」 山での二年間の生活は私を鍛えあげ山賊内には私にかなう者は居なくなっていた、頭目を除いてだが、その後も何度か頭目へ挑んでいたがのらりくらりとかわされ続けた、私はある日徳兵衛に尋ねた。 「なぜ手合せをしてくれないのだ?」 返ってきた答えに呆れたものだった︎︎"︎︎︎︎面倒くさい"︎︎私は腹を抱えて笑った、今となって言えるが頭目はかなりの手練だ薩摩へ戻った時まだ頭目が存命なら今度こそ手合せを頼もう、薩摩を飛び出した十六歳の童女は未だ十六歳のまま百五十年を過ぎようとしていた頭目が生きていれば百九十歳過ぎまぁ無理な話だろう惜しい事をした。
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