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私は何処かの海岸に打上げられると童に棒でつつかれて気が付いた、見開いた目を見て童は逃げ出すと暫くして其の親だろうか銛を持って現れ私の裝いと腰にする物を察してくれると家へと招き入れてくれた。
何月ぶりだろうか粗末ではあったが布団の上で休む事が出来た、目が覚めると夕餉のいい香りが漂ってきて女房であろう者が準備が出来たので召し上がって下さいと魚のたっぷり入った鍋をよそってくれた、これも又久しく巡り会わなかった物で獣のように私は掻き込んだ。
その家の童は二男一女、童男は明らかに私を恐れていたが女童は女でありながら刀を帯刀する私に殊の他興味を持った様で傍に寄ってくるとベタベタと触って話を聞かせてくれとせがんできた。
女房はそれを制止するも童とは興味を持ったものには執拗に執着するもの私は事の成り行きをかいつまんで話すと目を輝かして聞いていた、最後の部分に脚色を用いたのは言うまでもなかったが。
夜が明け私は出立の準備を整えていると旦那が何処へ行かれると聞くので私はとりあえず東へと答えた、するとここは特牛、下関には長門探題があり一日も歩けば届くだろうと言われ私は持ち合わせた金須を全て旦那へ渡し礼を告げて下関へ向かった。
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