Highlander JK【Japan Knight】

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石塁の上に立つと目の前には船堀を朱色に塗られた大船団がひしめき合うように浮かんでいた、船上からはこちらを威嚇するかのように銅鑼の音が響き黄土色の衣服を身に纏う兵士が船から浜へ降りる準備をしている。 しかし七年前と同じ轍は踏まない、一騎討ちに連中はのってこない集団戦法で瞬く間に多勢に囲まれ討ち取られる、かと言ってこちらも多勢で攻め込めば投槍や石弓の絶好の的、矢の威力は弱いものの(やじり)には毒が塗られている、かすっただけで命取りだった、それに次いで火箭(かせん)これは厄介で我々の使う火矢とは違い前の戦いで初めて目にした︎︎"︎︎︎︎てつはう︎︎"︎︎︎︎と言う爆発物を小型にして矢先に付けた、威力はそれより弱いものの近距離で喰らえば命取りになる矢だ、そして一番の脅威は船上より放たれる投石器からの攻撃、この投石器によりかなりの兵を失い併せて我々は戦い方を変えざる得なかった。 そこで我々は攻めるより守りを固めこの湾を囲むように高さ六尺六寸の石塁を築いたのだ、前の戦いではなかった立ちはだかる石壁に阻まれ上陸地点はなく船団は石塁の前を右往左往迷走していた、そこに伊予水軍が攻めて入る、その勇姿に触発され功を焦る武将が一人石塁から飛び出してゆく。 『どうにも男と言うやつはこうも武功を欲しがるものか・・・』 --------石塁に隠れていればいいものを何故態々飛び出してゆくのか理解できない大将首をとっても前の戦では大した褒美も出なかったと聞く、敵が疲弊したところで適当に出てゆけば良い見たところ大将は未だ船上のようだしここで命を落としては犬死、戦場で死ねればそれは誉なのだろうか、私は違う生きて生きてみっともなくとも生き抜いて大勢の強者と戦いたい、だからこんなところで討死は勘弁だ隣の兼三郎が何度もこちらを見てくるがそれを私は制する、まだ時ではないと。 戦闘は殆ど伊予水軍の海上戦で終結し多少こちらにも被害はあったが大方圧勝と言っても良いだろう、敵は残った兵を海岸に残し船団は湾の北側にある志賀島方面に後退すると取り残された兵は数を減らしながら百道浜方面へ敗走していた。
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