Highlander JK【Japan Knight】

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蒙古軍は博多湾の北、志賀島沖に撤退した私はこれといった戦果もなく石塁の裏に隠れたまま戦を終えた。 「のぉさくら戦ちゃこげんもんか?」 初陣の兼三郎が聞いてきたが私は黙って頷いた、実際はこんなものではなかったが志だけは高くその実稽古ではさくらから一本も取ったこともない素人同然の腕前を考慮しての行為、初戦から心折れられても薩摩に送り返すわけも行かないのだ私の後ろに付かせて弱った敵を討たせるこれを繰り返して自信をつけさせるこれが私の目論みだった、しかし蒙古軍が博多湾に姿を見せてからずっと胃の腑の上辺りがそわそわ落ち着かない戦い急ぐ焦りか、否、だったらあの飛び出していった武将のように続けば良いものを私はそうしなかった、そして蒙古軍が引いてからも気持は納まらない、なんだと言うのだ初めての体験に私は落ち着きなく辺りを彷徨う。 そして夕刻前、斥候が一騎やって来ると志賀島沖合に停泊中の蒙古軍に追撃を掛けるとの事、私は飛び出すように筥崎宮を経由して奈多の浜へ向かった。 奈多の浜に集まった兵は約千人余り総攻撃には少々手薄だが追撃であるなら十分それに海上からは伊予水軍も参加するという博多湾で見せたあの勇姿には溜飲が下がった、辺りは既に宵を迎え新月という事で自らの手すら見えない、しかし志賀島の方向へ目をやると蒙古軍の舟灯が揺れており騎馬には少々辛いが駆け足で向かう我々には三里先の目標を見失う事はないだろう、程なくして進軍が始まった。
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