Highlander JK【Japan Knight】

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船灯は目前まで迫っていたが三里も駆けて来ては流石に息が切れた、しかし周りは砂浜この人数が隠れる場所もなく其のまま(とき)の声を上げると船上の蒙古軍に攻め入った。 虚をつかれた蒙古軍であったが既に船上からは石弓が飛んできバタバタと味方が倒れてゆく私は波打ち際から一番近い船に後から着いてくる兼三郎を気にしつつ向った、海に入ると水を吸った具足は足枷のように重くなり水の抵抗もあって足取りが遅くなる後方からの長弓の援護で何とか船縁迄辿り着いたが辿り着いたものの私の身の丈では船上へ上がれない腰まで水に漬かり飛び上がることもままならない梯子もなく船上から死角になる船底に張り付いていた、遅れて後続も到着したが同じく攻めあぐねている。 「船を揺らせっ!」 どこか暗闇の中から声がした、私達は船底に手をつくと息を合わせ船を揺らした、最初は中々思う様にいかなかったが寄せる波の周期と同調すると船は転覆しそうに揺れ石弓を持ったままの蒙古兵が転落してきた、私は調子を合わせ船縁に手を掛けるとその勢いの反動で船上に飛び上がった、しかし辺りは蒙古兵だらけ仲間は誰一人いなかった、反射的に私は石弓兵の集団に飛び込んだ密集帯で刀は不利、弓兵の短剣を取り上げると次々に鎧の隙間から致命傷となる首や腋を刺して周った気がついた時、船上に動く蒙古兵は誰一人居なかった、まだ息がある者も遅れて船上に上がってきた仲間にとどめをさされていた兼三郎も最初は躊躇していたが喉元に刀を突き立てさせその手を優しく押してやった、それから私は隣合う別の船へと踏板を掛け乗り移り蒙古兵を襲った船同士が近付いていれば飛び移るのに労は無かった一足先に船上へ上がっていた伊予水軍の兵は既に三、四隻急襲し次の船に取り付いていた水上戦は手慣れたものなのだろう揺れる船でも勢いは止まらない。 すると突然、私は胸を突く様な痛みに襲われその場に伏した、矢でも刺さったかと思ったが違う、急に伏した私を見て兼三郎が近付いてくる。 「さくら、どげんした?」 「気にするな、先に行け!」 私は兼三郎にそう言うと立上り大きく息を吸った、何だったのだろうか痛みは既になくなっていたが昼間感じた胃の腑がそわつく感覚といい私は何か病に犯されているのだろうか。 「うわっー!」 突如、数隻向こう伊予水軍の兵から叫び声が上がった、胃の下辺りを手で押さえ其方を向くと伊予水軍の兵達が藁屑(わらくず)の様に吹き飛ばされ海上へ落ちている。 「止めろぉー!」 声が上がると先に行く自軍の兵がひと塊に一箇所に集まっていた揺れる船上、同じく揺れる船灯で明暗がその場所をチラチラ照らすと七尺以上あろうかという巨人がこちらを目指して突進してきているのだ。
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