第一噺 犬の顔

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 これは現在、事務員として働いているKさんという女性の話だ。  彼女の家は動物好きの家系で、小さい頃から犬や猫といった定番の動物だけでなく、ハムスターやインコのようなものまで手広く飼育していた。  その中でもやはり身近にいたのは犬だった、Bさん曰くは物心付いた時から家に犬がいない時期というものはほとんど無かったらしい。  そういった環境もありBさんは動物がとても好きで、大概の子供が親や祖父母に任せてしまう世話を、彼女は進んでやっていた。    さて、件の話はそんな彼女が中学生一年生の時に、やってきたモコという犬に関わる話だ。  このモコという犬は父親が会社の同僚から譲られたオスの雑種犬で、同僚の話では家の近くの雑木林に捨てられていたらしい。  家の事情で飼う事のできない同僚が、動物好きの父親に相談したのがきっかけらしい。  モコは雑種犬だったが、その愛くるしい姿に彼女の父親は二つ返事で引き取る事を承諾したそうだ。  そんなわけで家にやってきたのだが、家族は父の軽率な行動を注意こそしたが、飼う事に対して文句をいう者は一人もいなかった。  そんなモコの世話を主として行っていたのはKさんだった。  彼女もモコが好きだったし、モコも彼女によく懐いていたらしい。  彼女たちは、本当のきょうだいのように育ったという。  辛い事や悲しい事、嬉しい事などたくさんの思い出を共有しながら二人は大きくなっていった。
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