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僕はとんでもないことをしでかした。
生々しく、温かい液体が爪先を浸らせる。
「僕はなんてことを…… もう後にはひけない……」
誰にもばれないよう、気をつけてここまで運んできたのに。
まさかこうなるなんて思ってもみなかった。
後悔しても始まらない、と自分言い聞かせる。
雨が粒から線になって屋根をうちつけていた。轟音とまではいかないけど、豪快な音ではある。
二階に位置する僕の部屋は雨音がいときわ激しく振動まで伝わってきそうだ。
まるで、サスペンスドラマさながらの天候だと外を見て思う。
いっそのこと空が光り、雷でも鳴ってくれれば、雰囲気は完璧だろう。
地面にくたっと横たわり、白く艶やかな光沢が罪深い僕を映しだしている。
「しかたない……」
「宏太、あんたなにしてんの?」と母の声が聴こえ、階段を上がる音に僕の鼓動は早さを増した。
まずい……
僕は覚悟を決めた。
「ちょっと、あんた……」
扉を開け、母は絶句する。
「……ごめん、母さん。うどん、こぼした」
「だから、リビングで食べなさいっていったでしょ? 受験勉強するっていうから、せっかく作ったのに……。さっさと拭いて掃除しときなさいよ」
「う、うん……。あの、もう一度作って欲しいのですが……」
はぁ、とため息をつき、「今度こぼしたら二度と作らないからね」といって母は部屋を出ていった。
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