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道路近くに斜めに駐車している軽トラに乗り込み、助手席にビニール袋を置くと、エンジンをかけた。
独特の騒がしいエンジン音を聞きながら、軽トラを走らせる。
車内は昼間の熱気がそのまま閉じ込められており、走りながらドアのレバーをくるくると回した。下りた窓ガラスの隙間から、草の匂いと温い風が吹き込んで来る。
疎らな街灯の下を、軽トラのライトを頼りに走る。
故郷を離れる期間が延びるにつれ、頭の中の地図は少しずつ曖昧になってくる。東京の自宅周りの地図と引き換えに。
それでも、この場所への経路だけは決して記憶から薄れることはない。
ほんの5分程度のドライブで、その場所についた。
――藍との、逢瀬の場所。約束の場所。
逸る気持ちに従い、軽トラから飛び降りようとして、慌てて助手席のビニール袋を掴む。バタン、と硬い音を立ててドアを閉めた。
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