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喫茶 雨音
ここは雨の日だけオープンする喫茶店『喫茶 雨音』
店内のBGMは雨の音のみ。静かな時間を過ごしたい人たちの穴場となっている。
店主はボク、天ノ川星夜、今日で30歳を迎える。
スタッフは看板娘のサニー。白くてフワフワした毛が可愛いと常連客からも人気が高いが当人自身はそんなことはどうでもいい感じで素っ気ない。しかし、そんな態度もまた人気なのである。
今日も窓際の特等席から雨の降る風景を眺めている。
──カランコロン
店の扉が開いて常連のサラリーマンがハンカチで汗を拭いながら入ってきた。
「いらっしゃいませ。」
「はぁぁぁ。ここは天国だぁ。外は雨の湿気と暑さで目が回りそう。」
サラリーマンはいつものカウンター席に座りながらもう一度汗を拭う。
「そうですねぇ。外は梅雨が明けたと言うのに雨続きで毎日ムシ暑いですねぇ。」
そう答えながら冷たいおしぼりとお水を彼の前に差し出した。
「まぁでも雨だからこそ雨音で休憩という名目のコーヒータイム《おサボり》ができるんだけどぉ(笑)。あっ、いつものお願いね。あー気持ちいい!」
サラリーマンは冷たいおしぼりで顔を拭きながら言った。
「かしこまりました。」
サラリーマンが注文したアイスコーヒーフロートを作り始める。
「そういえばさ、今日ってマスターの誕生日じゃなかったっけ?」
「わぁ、覚えててくれたんですか?ありがとうございます!」
「覚えるもなにもイケメンマスターの誕生日が7月7日の七夕ってめっちゃ印象強かったしさぁ……。」
「あ、それよく言われます(笑)。」
「で、織姫はいるの?やっぱり今夜はデートなの?うゎあ羨ましいなぁ!」
ニヤニヤしながらサラリーマンが質問してくる。
「あははは。デートしてくれる女性なんていませんよぉ。はい、どうぞ。コーヒーフロートお待たせしました。」
やんわりと話を反らせるようにコーヒーフロートを彼の前に置いた。
「またまたぁぁ。イケメンなぉにぃ……。」
と言いながらサラリーマンはコーヒーフロートに乗っかっているアイスクリームを嬉しそうに頬張った。
サニーのほうを見ると全く興味なさげに窓の外をジッと見つめていた。まるで飼い主の帰りを待ってるかのように……。
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