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「関係ある?」
「貸して」
こちらの質問に答えることなく、宇佐美はオレの手から無理矢理イヤホンを奪い取ると、自分の耳に躊躇なくイヤホンをさす。
いつの間にかオレの前の席を陣取り、頬杖をついて、音楽を聞き入っている。
しばらくすると、珍しいものでも見つけたかのような顔でオレをまっすぐ見た。クラスのやつらが言っていたとおり、宇佐美の顔が整っているのを、この時オレははっきりと理解した。
「意外。クラシックを聴くのね」
「それが?」
「見た目からして、ロックとかその辺りかと思っていたから」
まぁ、確かに見た目からしたら意外性があるかもしれない。
金髪、耳ピアス。
学ランの中にはTシャツ。
そんなやつが大人しく本を読んでて、かつクラシックを聴いてる。
宇佐美が驚くのも無理はない。
「良いだろ、別に。本を読むときに誰かの声が入るのが嫌なだけだ」
「それでいて、純粋。なるほどねぇ」
何かを納得したかのように宇佐美は意地が悪そうな顔をして、オレをまっすぐ見る。
女子にこんなに間近に見られるのはひどく落ち着かなくなる。さっさとこの場を離れて、家にでも帰るか。
リュックに本を突っ込んでから立ち上がり、宇佐美が握っているイヤホンを取り返そうとしたところで、逆に宇佐美に手首を捕まれた。
「ねぇ、ダンスに興味ない?」
「ダンス?」
ダンスと言えば、中学の体育の授業くらいしかやったことがない。人前で踊るのも苦手だし、何を表現したいのかわからないものばかりだった記憶がある。
「特に興味ない」
「絶対興味あると思ったんだけど」
「全然ない」
「本当かなー?」
ぐいっと顔を寄せてくる宇佐美。意思が強そうな目の奥に疑問が浮かんでいるのがよくわかる。
「今から時間ある?」
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